2011年1月27日木曜日

続・ザッポス伝説 -ザッポスの成功要因について-

ちょっと前にザッポス伝説についての感想を書いたが
引き続きザッポスの成功要因について考えてみた

念のため先に"いいわけ"をしておくが
これはブログなのでアカデミックに考える気はないし、
アカデミックな定義と違っても実務的に理解できればいいと思っている

まずは、そもそものビジネスモデルを整理すると、
オンラインの靴屋さんはいわゆるプラットフォームビジネスになる
下図参照
















ツー・サイドプラットフォームビジネスとしてとらえると
(簡単のためツー・サイドと仮定する)
ザッポスの周りで働く主な力学はというと

・サイド内ネットワーク効果(図の①)
 同じサイド内の参加メンバーが増えれば増えるほど
 プラス(もしくはマイナス)の影響が出る
 Ex.1 Mixiを利用する友達が増えれば増えるほどMixiの価値が上がる(+)
 Ex.2 求職者が増えれば増えるほど採用への競争率が高まるので
    そのWebサイトを避ける(-)

・サイド間ネットワーク効果(図の②)
 違う参加の仕方をするメンバーが増えれば増えるほど
 プラス(もしくはマイナス)の影響が出る
 Ex.1 PS3にゲームを提供する会社が増えれば増えるほど
    消費者にとってPS3の魅力が高まる(+)
 Ex.2 マイナスが思いつかない、、、

の二つがある
基本的にはこの2つのネットワーク効果をプラスに働かせる打ち手を狙う(はず)
で、ザッポスの行動をまとめると下表のような感じ








もちろんバランスの問題もあるが、

・クリティカルマスを超えると一気に業界標準(Winner-takes-all)になりやすい事
・上述のサイド間ネットワーク効果のプラス面

を考えると、
消費者側、補完業者側(メーカー側)のどちらを先に増やすかという問題が出てくる

基本的にはリスクが少なくてリターンが大きそうな側にかけるしかないのだが、
ザッポスの場合は、後者の補完業者側を選んだ

・“靴の種類さえあればもっと売れる”という確信
・ユーザー数を増やすためには莫大なプロモーションコストがかかるが
 ネットバブルの崩壊でそれほど大きな手持ちキャッシュがなかった

という事が決め手だったが、この判断が正解だったように思われる

つまり、靴の種類を増やすというのは、いわゆるロングテールの考え方にも合致し
ザッポスを利用してくれたユーザーを効率的にアクションさせる事ができるからである
(お金をかけてユーザーを集めても欲しい靴がなければ売上げはたたない)

つまり、「ネットワーク効果をプラスに働かせた」ことが一つ目の成功要因だと考える


次に、大きな転換点となった
アウトソース vs 自前主義の影響を考えてみる

一般的にアウトソース化はコストを変動費化できるので
ビジネスの規模が小さい時にはいいが
売上規模が大きくなっても利益が増えにくい

逆に自前主義の場合、コストが固定費化されやすく
ビジネスの規模が小さい時には負担が大きいが
売上規模が大きくなるほど利益が増えやすい

また、アウトソース化は自社のコントロールが効きにくくなるリスクをはらむが
ある意味ではプロフェッショナルとして当たり前の品質は担保されやすい
自前主義の場合、自社方針に沿った運用がしやすいが
マネジメントにリソースをさかれる

そして、売上をどう作っていくかという問題であるが

売上 = 顧客数 × 顧客単価
顧客数(新規+リピート)
顧客単価(1回あたり単価×購入頻度)

全部できれば全方位で対策していくに超したことはないが、
たぶん打ち手のどこかで不整合がでてくるし、
立ち上げ期のベンチャーにぜんぶやることなんて無理だろう

基本的には、何度も何度も繰り返し購入するような商材
(かつ、マルチホーミングコストが高い)の場合は
リピートを増やし、購入頻度を高める方がフィットするだろうし

繰り返し購買するような商材ではない(かつ、マルチホーミングコストが安い)のであれば
新規獲得を増やして1回あたり単価を高めるほうが得策だろう

ザッポスの場合は、扱う商材が"靴"であったため、
繰り返し購入を前提としたビジネスが成り立つ範囲であったと考える
(下図のようなイメージ)













そうであるならば、コールセンターや配送に関しては
アウトソースよりも自前にして顧客ロイヤリティを高め
リピーター化してもらう方が売上UP、収益性UPにつながるだろう

ちなみにこのようなプラットフォームサービスは消費者側の利用料は
ほとんどのケースにおいて無料なので、
マルチホーミング(複数利用すること)コストはきわめて安いので
顧客ロイヤリティは本当にそんなに重要なんだろうか?という疑問もある

しかしながら顧客ロイヤリティを高め、
最初に使われる存在でいる事にはそれなりに意義がある、
なぜならば自分が欲しいものが見つかったら、
ほかのサイト(店舗)は面倒だから探さないというような
価格感度の低い消費者はそのプラットフォームで購入する可能性が高いからである

そもそもなぜ自前主義にした方が

・顧客ロイヤリティがあがるのか、
・収益性が高まるのか、

という所もある程度想像がつく
ザッポス伝説の中にも出てくるように、
受注経路としてはコールセンターが結構大きなチャネルになっていると思う

一般的にコールセンターといえば、従業員満足度は低く
マニュアル化された対応が主で離職率が高くなりがちな傾向がある

離職率が高いという事は

・求人費用が高くなる(求人広告費、時給を高めるなど)
・ナレッジが蓄積されにくく生産性が高まらない

これは、まさに収益性を下げる方向に働く要素である
そしてこれが一般的なコールセンターの実態だと思う

一方でザッポスがとった方法は

コールセンターの従業員に裁量権をもたせ、
かなり自由に顧客と対峙することができるようにしている

また、採用の時点でこういった顧客とのコミュニケーションを
楽しめる資質を持つ人材しか採用しないプロセスにしている

つまり、

裁量権が渡されているので顧客とのコミュニケーションを楽しんでよいわけで、
(むしろ顧客を驚かせるようなサービスが推奨されているほど)

これにより顧客満足度とともに従業員満足度が高まる

従業員満足度が高まるということは離職率も下がり、
求人費用が下がるともに、ナレッジが蓄積され生産性も上がっていく

生産性があがるとより顧客とのコミュニケーションを楽しめるようになり
顧客満足度もさらに上がるという好循環に入る

顧客ロイヤリティを高める、という方針のもと
人事制度も、現場でのオペレーション方法、権限付与も
整合性が取れたものになっているのである

これらをまとめると、
「自前主義で従業員満足度、顧客ロイヤリティを高めることがプラスに働いた」
というのが二つ目の成功要因

なんだよ結局最後は、

「サービス産業は従業員満足度を高めて、顧客ロイヤリティを高めましょう、って話か」
なんて思わないで欲しい、
あくまでもザッポス(靴販売)の場合はそっちの方が
売上の作り方にフィットしていたというだけで、
なんでもかんでも従業員満足度、顧客ロイヤリティを
高めるようなサービスを提供しましょう
なんて考えるのは間違ってると思ってるので
(往々にして日本のサービス産業は過剰サービス&コスト高=生産性低い)

あくまでもビジネスモデルとフィットする、
整合性があり打ち手の方向性に一貫性があるものにしないとダメなのだと思う
そういう意味では、
ザッポスの打ち手、進んだ道は
ビジネスモデルとの整合性も高く一貫性のあるものだったと思う


・・・・・

2011年1月25日火曜日

ザッポス伝説

顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説―アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説―アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか
トニー・シェイ 本荘 修二 監訳/豊田 早苗 訳/本荘 修二 訳

ダイヤモンド社 2010-12-03
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ついに、というか、やっと、というか
初めてiPhoneで電子書籍を読んだ記念すべき一冊

ビジネス"小説"(もちろん小説ではないんだろうけど)として

「ザッポス」というビジネスの生い立ちを読み解くにはちょうどいいくらいの軽さだった

直感的な感想は「ザ・ゴール」を読んでいるようなイメージ
もちろん内容は全然違うしザ・ゴールの方がよりオペレーション手法の解説に重きがある
けれどもビジネス小説という感覚で読めば同じようなわくわく感を持ってサクサク読める

内容としては大きく分けると2つの流れになっている

はじめに
「ザッポス伝説」を築き上げた人物のバックグラウンドの共有

著者であり、社長であるトニー・シェイの
人生観というか、行動の基準になっている人となりを
少年時代から大学、起業に至るまでの人生を追いながら紹介する事で
物語の序章としての役割を果たしつつ読者と物語の背景・コンテクストを共有していく

ある意味で「起業する」人物がどんな特殊な人間であるかというのを
表現している部分でもある
また、その特殊性を許す土壌があったというのも重要なポイントかもしれない

いずれにせよ、彼の思考・人となりが共有されるので物語に入っていきやすい
ただ、若干盛り込みすぎて飽きてしまう部分も出てくるので、
ある程度人物像をつかんだら読み飛ばしてもいいかもしれない

メインのテーマは
「ザッポスが軌道に乗っていく過程」が描かれている

基本的には、
従業員満足度が高まると
サービス品質が高まる
すると顧客満足度が高まる
そしてそれによって事業の成長・収益性の向上がもたらされる
といういわゆるサービスプロフィットチェーンの好循環の話として捉えれば
大した感動もない話しだし、新たな気付きなんてものはほとんどない

ただし、一つ一つの打ち手、考え方が実務レベルで紹介されているので
表面的なビジネス書を読むよりよっぽど共感できるし、すんなり理解できる

サービスプロフィットチェーンの考え方を体系的に理解したいのであれば
この本を読む前に別の書籍を一読した方がいいかもしれない

例えば下の本などは、サービス全体の事が簡易に書いてあってわかりやすい
サービス・マーケティング 【第2版】サービス・マーケティング 【第2版】
近藤 隆雄

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ちなみにサービスプロフィットチェーンは下のようなフレーム


とはいえ、サービスマネジメントの授業で教わったように

従業員満足度が高まると本当にサービス品質はあがるのか?
サービス品質が高ければ顧客満足度は本当に高まるのか?
顧客満足度が高まれば売上は本当にアップするのか?

という部分についてはザッポスがとった一連の打ち手の一つ一つが
どうROEにどう影響を及ぼしているかというのをもう少し詳しくみてみないといけない
が今のところそこまで読み解けていないので
もう少し余裕ができたらちゃんと加筆しよう、、、


 

2011年1月22日土曜日

日本でソーシャル・ネットワークによる採用は進むか!?

一部の人材業界で以下の記事のように
日本もソーシャル・ネットワークでの採用活動が進むのでは!?
という話が出ているが、そう判断するのは早計だと思う

ジョブボードからの脱依存、ソーシャルウェブへの移行が進む米国採用事情
求人広告はやめとこう ソーシャル・ネットワークで一本釣りだ! - Market Hack

年初から米国発のSNSであるFacebookが話題をさらい
誰もがLinkedInに登録を始めているのだから
こういった意見がでるのはわからなくはない

ただ、この記事のソース元が米国だということを軽視しすぎている
まずは米国と日本の間の文化の違いを
ちゃんと認識するところから始めたほうがいい

異文化マネジメントの観点で言えば
最も大きな問題は「Role clarity:役割の明確度」である

アメリカでは仕事、業務内容が詳細にかつ明確に定義され
それに伴い必要なスキル、人材要件が明確に決まる
つまり人事担当者は"明確に定義されたスキルとそれを持つ人材"を探せばいい
これは詳細な経験職務と経験年数がわかれば、ある程度FIT感がわかる、
という事を意味する
だからこそ、Job Boardで大量の応募者の履歴書を見て面接するよりも
SNSで職務経歴、経験年数でターゲティングしてアプローチしたほうが安上がりになる

一方で日本は、というと
業務内容はあいまいで定義されておらず、
2年、3年ごとに職務がかわるローテーション人事という制度において、
全員をCEO化するかのようにゼネラリストを育てる

みなさんも、
・自分の役割を明確に、かつ詳細に定義できるか
・やっと業務を覚えたと思ったとたんに異動を命じられるといった経験をしていないか
考えてみるといい

日本におけるこのような人事慣習においては
DB化できるスペシャルな技術で人材をターゲティングして個別にアプローチするよりも、
広範囲のなんとなく業務をこなせそうな人材全体にアプローチして
多くの選択肢から選ばないと誰が本当にFITするのか判断ができない

二つ目の大きな問題は
「Task vs. Relationship orientation:任務遂行重視 vs 人間関係重視」
の部分である

米国は結果によって評価され、成績達成が大切にされる
また、ビジネス上の決断と個人の感情を分けるべきだと思われており
個人的に相手のことが好きだろうが好きじゃなかろうが仕事ができる
要は個人主義と言った方がわかりやすいかもしれない

だからこそ必要なスキルを備え、人材要件を満たしていれば十分で
職場での人付き合い、人間関係と言った部分はそれほど重要じゃない

しかし日本では人間関係が重視され
"What you know" よりも "Who you know"
によって仕事のパフォーマンスが変わる

だからこそ対面での対人コミュニケーション能力の確認が必須で
DB化できるようなスキルを前提とした採用フローが組みにくい


このような文化的な違いがあるからこそ
日本でSNSを中心とした採用活動が進むまでには時間がかかると思っている

誤解をしないでほしいのだが、
SNSを中心とした採用活動がまったく進まないとは思っていない

一部のトップ層を中心とした、
"スキルである程度判断がつく層" においては間違いなく進むだろうし
旧態依然とした人事制度に引っ張られないベンチャーのような企業では
必要なスキルを持った人材を効率的に吸い上げる仕組みとして利用されるだろう

また、今後日本の人事制度においても業務内容に対して明確な定義がされ
給与体系もそれに基づいた合理的なものに変化していけば
SNSを利用した採用も増えていくだろう


ただ、今すぐにSNSですべての採用活動が行われるようになる
という事はないんじゃないだろうかと思うのである



・・・・・

2011年1月13日木曜日

自分のアイデアを支持させる方法

ここ最近、職場でぶつかることが多い

自分にとって大きな課題だと気づいているのだが
理屈のない批判や、理屈のない仕事の仕方に許容力がない

平たく言うと、
やりたくないならやらなきゃいい、俺はもう知らん
やりたきゃ勝手にやればいい、俺はもう知らん
となりやすい、我慢ができないのだ

良い意味でいえば、自分の意見を持てるようになり
当事者意識、信念を持って仕事に取り組んでいるからこそそうなるのだが
現実問題、ぶつかるよりも目指す方向に並走できるように促せるようにならないと
これ以上の自分の成長を見込めない

自分はこういう問題に対して自己啓発的な解決策を探すのは性に合わないので
理屈で傾向と対策を理解して、腹落ちさせておきたい
そうすれば、冷静に対処できる気がする


今月のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビューは
あまり読む記事がないなと思っていたんだが
ふと気休めにパラパラ見てたらタイトルの記事が載っていた
たぶん調査対象が米系企業っぽいのでちょっとコンテクストが違う感じもするし、
当たり前の事ばっかじゃねーかという話なんだが、
この悩んでいるタイミングでこの記事に出会った自分への忠告として
学ぶべきエッセンスを簡単にまとめておく

Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2011年 01月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2011年 01月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2010-12-10
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[アーティクルの背景]

我々の認識
- 明快かつ論理的に説明する事が重要

現実問題
- 説明する相手は生身の人間
 (不安を抱く、意見が違う、自分の立場に影響がでるかもとひるむ)
- 新しいアイデアにはまず疑ってかかる

素晴らしいアイデアを実現するために人々を巻き込むことは、そもそも人間の問題
すなわち「ライフスキル」(日常の問題に効果的、建設的に対処する能力)

みんなアイデアや戦略を見出すことに関心が向いているが、
これらを実現するために必要なサポートを得ることは全く別の話

"決断"するという事は人間性やグループダイナミクスといった
あいまいな世界からは逃げられない

ビジネススクールにおいても

・問題を解決するためにアイデアを生み出す
・そのアイデアを検討し、議論し、みんなの理解を得、支持を取り付け、
 推し進め、成功させるための方法を考える

この二つの時間は8対2ぐらいの割合になってしまってる



[反対者や批判者を巻き込むテクニック]

著者らの調査では、誰よりも効率的に支持を取り付けた人は

・抵抗勢力を"無視する"

というようなずる賢い戦略を実践していない
むしろ真逆のやり方

・抵抗勢力を"抱き込む"

で成功している


批判された場合の対策はシンプルだが直観に反するものである
我々の直観
- データや理屈でみんなを説き伏せ、攻撃してくる奴は、
 脅威にならないようIQの力で打ちまかす

実際の有能な人
- 弾丸のように言葉を浴びせたりしない
 相手に敬意を払い、単純明快で常識的に対応する

たいていの人にとって
偏っていると思う相手に敬意を払うのは簡単なことではない
(個人的にはこれがかなり当てはまるし自分も偏ってる)

人間の動機(批判の動機)は多種多様でなので、
裏を読んだりしても無意味

敬意の対極は反撃
周囲は相手の攻撃が不当なものだとしても
反撃する人間を見て、相手側に同情してしまうかもしれない

だからこそ、
敵を引き入れ、あえて批判させ、反撃はしない

もっと高い次元にたって
すぐれた指導者としての印象を与える

有利な立場に回れば
人々はアイデアに共感し、話に耳を傾け、感情面でも近づいてくる



[批判への対処]

場当たり的な対応はダメ
成功の決め手は適切かつシンプルで、常識的な下準備

掲載されているアイデア潰しの24の質問リストに目を通し、
想定される攻撃と対応について事前に自問(もしくは支持者とブレスト)しておく



[偉大なリーダーたちは物語を語る]

偉大なリーダーに共通する特徴の一つ
単純明快なコミュニケーションという才能

このようなコミュニケーションとは、

・やさしく噛み砕く

というものではなく、

・みんなに問題を理解させるいちばんの方法を見つけさせる

というもの

この段落の内容については
先日ゼミで勉強したこっちの記事:Storytelling That Moves Peopleの方が参考になる


何はともあれ、
正直気に入らないが、感情コントロールをする術を学ぼう
それが自分のビジネスパーソンとしての質を高めるのだから



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2011年1月12日水曜日

ハーバードの「世界を動かす授業」

ハーバードの「世界を動かす授業」 ビジネスエリートが学ぶグローバル経済の読み解き方ハーバードの「世界を動かす授業」 ビジネスエリートが学ぶグローバル経済の読み解き方
リチャード・ヴィートー 仲條 亮子

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ビジネス関連の書籍にちょっと飽きてきたときに
息抜きに読んでいた本

著者自身が書いているように
「なるほど、世界の経営者はこんな風に世界を学んでいたのか」
と感じることができる一冊だった

一つ一つのテーマでいえば
細かくデータが出ているわけではない

ただ、全体を通して知っておくべき世界経済の流れというか
政策と経済の関連がわかりやすく、丁寧に書かれた良書だと思う

下手な経済学の本を読んで、
数式の羅列で吐き気を覚える前に
こういう難しい事をわかりやすく説明してくれる本で頭を休ませた方がいい

世界の流れをつかみたい、
なんであの国はうまくいっているんだろう、
そんな疑問を持っている方は是非読むといい

逆に経済"学"が得意で、
数値、数式や理論をベースに正確に説明されないと許せない
という方にはお薦めできない

たぶんAmazonのレビューで辛口の人はこういう知識ベースがある人で、
この本は僕のような経済学素人向けなんだろう

正直言うと、こういう視点は20代半ばまでに養っておきたかった
簡単に、わかりやすく、世界の流れが把握できた、つもりになれただけで十分だ



・・・・

2011年1月9日日曜日

The Mysterious Art and Science of Knowledge-Worker Performance

先日のゼミで発表した資料


原文もここからDL可能

今回のテーマは
ナレッジワークに対してどう科学的にアプローチするか
という内容

ドラッカーが
ナレッジワークやナレッジワーカーにもっと注意を払うべきだと
主張したのが1959年

しかしマニュアルワークでテイラーやフォードが行ったような
科学的アプローチをナレッジワークに対して行った人間がほとんど見られない
というのが出発点

ナレッジワークが注目される理由は3つ
1.ナレッジワークがイノベーションの核である
2. 組織の成功には優秀なナレッジワーカーの採用と維持が欠かせない
3. ナレッジワーカーのパフォーマンスに焦点をあてる事で
  分断されがちな戦略プランニング、組織デザイン、IT投資
  といったタスクの統合につながる

ナレッジワーカーのパフォーマンスの問題点は3つ
1. ナレッジワーカー一人が重要になりすぎる
 (原子爆弾ももともとは一人の頭の中で発明される)
2. 重要な問題というのはいつも扱いにくいものである
3. 本当に重要な問題を解決するためには革新的な
  新しいコンセプトやツールの創造が必要になる

こういった背景からこの論文が書かれている

さて内容は大きく分けて二つ、
1.ナレッジワークに関する5つのキーイシュー
2.ナレッジワーカーのパフォーマンスを改善するために考慮すべきフレームワーク

ここで5つのキーイシューとは、
1.ナレッジワーカーのパフォーマンスを決定する要素はわかってきている
  あとはこれをどのように統合していくか

  ナレッジワーカーのパフォーマンスを決定する要素として
  Management,IT,Workplace designがパフォーマンスに影響することはわかっている
  しかしこれらを統合的に扱っている企業はほとんどない
  この3つの要素の間にある空間を埋めるモデルが必要である

2.多くの組織はナレッジワーカーをセグメントする事の必要性を認めない

  一つの主要な障害は"ナレッジワーカー"という言葉の一般的な使用法である

  大きな疑問、
  営業やマーケティング部のために働くというだけで
  ハードウェアエンジニアリング組織全体に対して同じソリューションを適用できるか?
  同じナレッジワーカーというだけで
  カスタマーサポートで学習されたナレッジをチップデザインの組織に移転できるか?

  どちらもできないのは明らかである

  しかしマネージャーはナレッジワーカーをセグメントすることに抵抗を示す
 
  その理由は
  組織のエリート主義的なパースペクションにつながる
  暗黙的な実力主義に感じてしまう
  という事

  こういった理由がある事は理解しつつも
  著者らはセグメンテーションを推奨している
  (後半のフレームワークに関連してくる)

3.誰もナレッジワーカーのパフォーマンスに責任を負ってると思っていない

  マネージャーに
 
  どの組織がナレッジワーカーのパフォーマンス向上に貢献しているか?
  と尋ねると多くが手を挙げる
 
  続いて
  ナレッジワーカーのパフォーマンスの責任を持つのは誰ですか
  と尋ねると手を上げ続ける人はほとんどいない

  マネージャーがナレッジワーカーのパフォーマンスの責任を持つのは明らかである
  しかし彼らは多くの場合、今期待されているパフォーマンスに焦点を当てる必要があり
  ナレッジワーカーのパフォーマンス向上に割く時間を見つけることができない

4.企業は職場環境のリ・デザインを繰り返すが何も学んでいない

  多くの企業は職場環境の変更をいろいろ試すが
  仮説や、記録もないままで何も学習していない
 
  新たな職場環境を決める際の決定因子が
  FAD,Fashion,Faith,Financeになってしまっている

  企業はインフォーマルなコミュニケーションを活発化するために
  ヒーターのある部屋を作ったり、カプチーノバーを作ったり、色々する
  しかし特定のデザインがインフォーマルな会議を活性化した証拠はほとんどない

  多くの場合、"ソーシャルスペースは空っぽ"である

  また、オープンな職場環境という案も、オープンにすればいいってものでもない
  オープンにしたことで、集中したい仕事は家でこなす社員がいたり
  機密度の高い案件を扱う職員は、
  オープンにすれば大幅に自分のパフォーマンスが落ちると懸念している

  ITサポートについてみると
  パーソナルデバイスはメジャーになりつつあるが
  結局、社内の基幹システムとはうまく統合されない
  なぜなら、管理、維持していくコストが高くつくからである
  著者らの調査した中で一番ITをうまく提供していた企業の手法は
  特定の仕事の役割やタスクが最もうまくサポートされる
  テクノロジーをどのように選択し、使用するか
  というトレーニングやコーチングをしていた企業である

5.ナレッジワークの合理化には抵抗が多い、ハイエンドの場合は特に

  ナレッジワークは合理化が進んでおらず
  ナレッジワーカーというのは合理化に抵抗者の一つである

  ナレッジワークの合理化に向けての二つの視点

  1.エンジニアリング原則が適用できるという仮説に基づくProcess視点での合理化

  1980年代から1990年代ごろまでは
  構造化しやすく、リニアにとらえやすく、繰り返しの多いタスクが対象であった
  現在はまだ構造化されていない繰り返しの多いタスクが対象になってきている

  2.物事を行うための暗黙的なコーディネーションを強調するPractice視点での合理化

  多くの企業においてよく行われるのが
  賢い人間を雇って、好きにやらせる
  という方法

著者らはこれらの5つのイシューを提議した上で、
ナレッジワークの生産性向上に向けて二つの検討項目を提示

1.ナレッジワーカーというのを一区切りにして同じものとして扱うのは間違っている
  =セグメンテーションの必要性

2.ナレッジワーカーが幸せに働けるように、彼らに
  どのように、どこで働くかをいくつかの度合いに分けて選択させる必要がある

ここまでが5つのイシューのまとめと、それに対する著者らの解決策の主張

この後、具体的な解決策としてフレームワークが出てくるのだが、
セグメンテーションとナレッジワーカーが選択できる範囲の掛け合わせの
マトリクスの中で、
コスト(金銭的、時間的)、ナレッジワーカーの満足度、マネジメントのしやすさ
を考慮してマネジメントシステム、IT、ワークプレイスデザインに
適切な投資をしましょうという内容
詳しくは論文自体を読めばそんなに難しくないのでそちらに譲る

このアーティクルのつぼは、
5つのイシューをわかりやすくまとめた事と、
セグメンテーション×選択範囲というマトリクスを利用して
マネジメント、IT、ワークプレイスデザインへの投資も科学的に判断しましょう
と問題定義できたことだと思われる




・・・・

2011年1月7日金曜日

専門学位論文 - 研究計画 -

研究計画の方向性にOKが出た
というか、昨年末には先生とのメールのやり取りでOKが出ていた

もともと研究したかった事があったので、
自分の中でのテーマ設定はすんなり決まっていたし
ゼミや授業を通じて学んだ理論、フレームワークは

こういう考え方は分析に活かせるな、
とか
このフレームを当てはめるとこう見えるよな、
みたいなことは段階的に頭の中で形作っていたので
研究方法に関してもほとんど苦労せずにOKをもらえた

学校に通う目的は人それぞれだけれども
自分としては専門学位論文を通じて学ぶ事が一番大きくなると考えている

もちろん授業で得られる知識や考え方は
とても身になる事が多いのだけれども

あたりまえの話を教わる事よりも、
自分の課題意識に対して解決策を自ら探索し、
体系的に整理するプロセスの方が後々大きな力になると思っている

プラットフォームビジネスをどうやってグローバル展開するか

という課題意識に対して、

異文化マネジメントというレンズを通して分析することは
今後の自分にとって大きな柱となるだろうし、
ここをやりきれば誰にも真似できないオリジナルな能力を手にできると思う

やる気がみなぎりすぎてすでに風呂敷広げすぎた感は否めないものの
とにかく来年の今頃に向けてしっかりと走り出したいと思う